裏箔

裏箔( うらはく)とは、絵画用の絹(絵絹)の裏側に金箔を貼る技法です。金箔の上に薄い生地を重ねている分華やかな輝きを抑えられ、表面に直接金箔を貼りつけるよりも落ち着いた色合いになります。裏に配した金箔の色が表に透けることが前提となっている技法のため、布目が詰まっている麻布や、布目がない紙ではあまり使われません。

鑑賞している絵画に裏箔が使われているか見分けるのは至難の業。東洋の絵画は、一部を除いて、布や紙を使って掛け軸・屏風・巻物といった形に仕立てられます。鑑賞のためだけでなく保存・補強にも効果があるのですが、裏面まで見られる機会はほとんどありません。そのため、傷んだ絵を修復する際に補強に充てていた布や紙をめくって、ようやく裏箔が施されているのがわかることもあります。

裏箔の技法は中国から伝来し、日本では平安時代以降の作品が多く残っています。特に仏画に集中しており、金属製の仏具には裏箔を施しています。国宝の『釈迦金棺出現図』では木にかけられた仏鉢、『十二天屏風』(東寺・京都市)の梵天像では冠や首かざりなどで確認することが可能です。

また、裏箔と類似した技法で裏彩色と呼ばれるものもあります。裏彩色とは、絹の裏側にさまざまな色の顔料を塗る技法です。絹を1枚通すことで、表面に直接彩色するよりも、ほんのりと色づいた柔らかい色彩を見せられるのが魅力。『十二天屏風』(東寺・京都市)の梵天像のように、鎌倉時代以降の仏画では人物の白い肌や朱色の衣など、1枚の絵にさまざまな色で裏彩色を施しています。