西陣織

西陣織(にしじんおり)とは、京都市北部で生産されている先染め織物です。糸を染色してから図柄を織っていくため、布を織ってから色を染める後染めよりも耐久性に優れています。華やかな和柄を織り込んだものや、伝統的な日本画を意匠として取り入れたものなど、豪華で趣向を凝らしている点が特徴です。1976年に国の伝統工芸品に指定されました。

起源は5~6世紀ごろまで遡り、渡来人系の秦氏が養蚕技術をもたらしたのが始まりとされています。794年に都が平安京へ遷都すると、織物をつかさどる役所である織部司が設置されました。当初は官営の工房として稼働していましたが、次第に職人たちは個人的に依頼を受けて織物を作るようになります。

室町時代には応仁の乱の影響で、多くの職人は戦禍を逃れるため平安京から脱出し、工房も壊滅状態に陥りましたが、戦後彼らは京都に戻って織物づくりを再開しました。その後大陸伝来の新しい織物技術を取り入れ、西陣織は日本の伝統的な織物にまで成長します。江戸時代後期の飢饉や大火、明治時代に首都が東京に遷ったことなどが影響し、何度も存亡の危機にさらされましたがその度に復興し、現在は日本を代表する高級織物としての地位を確立しました。

近代以降の製作方法は機械化が進んでおり、方眼用紙に写した図案「紋意匠図」をコンピューターで読み取り、織機で織っていきます。ただし、複雑な箇所に関しては現在も人の手で作られています。伝統的な着物や帯だけでなく、壁掛けや洋装への導入も進んでおり、進化を続けている伝統的な織物です。