輪島塗

輪島塗(わじまぬり)とは、石川県輪島市で生産されている漆器です。起源は現在も明らかになっていませんが、紀州(現在の和歌山県)にある根来寺の僧侶が輪島重蓮寺を訪れ、寺の家具類を作って漆工の技術を伝えた説や、輪島の近くにある柳田村の「合鹿碗」という漆茶碗が原型という説などがあります。

江戸時代前期には現在の輪島塗とよく似た形態になっていたようで、はじめは塗師屋が商品見本を背負って各地を行商し、販路を拡大していきました。やがて職人同士の組織単位で販売を進めるようになり、需要の増加に伴い輪島塗の品質も向上。加えて輪島は北前船の寄港地であったため輪島塗は日本中に運ばれ、評判は全国に広がりました。

特徴は装飾の美しさと、器の堅牢さです。輪島塗の装飾には金を使用することが多く、沈金や蒔絵の技法を用いて豪華に装飾されています。堅牢さについては、木地の縁や損傷しやすい部分に布を重ねて強度を補強し、さらに20以上の工程を経て何度も漆を塗り重ねて作るため、損傷しにくい漆器が完成します。

海外でも人気があり、明治時代以降は国外の博覧会へ毎回出品し、そのたびに漆器の中では群を抜いて高価な取引が行われました。第二次世界大戦後の生活様式の変化により、日用品としての漆器の国内需要が減少傾向にありますが、現在は輪島塗のヴァイオリンを製作したり、海外から来日した作家によって輪島塗のアクセサリーを作る工房が建設されたりと、器以外への活用方法を模索する活動を活発に行っています。