雁皮紙

雁皮紙(がんぴし)とは、雁皮というジンチョウゲ科の植物から作られる和紙のことです。雁皮の成長は遅く、栽培が難しいため、主に自生しているものが使用されます。雁皮には節が多く、塵を取る作業にかなり手間が掛かること、繊維が細かいぶん紙として使えるくらいの厚さに漉くのが難しいことから、値段は高価なものが多いです。

特徴は、下に文書を重ねたときに文字が読めるくらい薄手であるところ。かなり薄手ですが耐水性には優れており、少し濡れたくらいでは水が染みたり紙が破れたりすることはありません。長期間の保管にも向いていて、虫食いや変色にも耐性があります。表面は滑らかで光沢があり、色は自然なクリーム色のものが一般的です。

主な雁皮紙の産地は、土佐(高知県)、美濃(岐阜県南部)、名塩(兵庫県西宮市)、五箇山(富山県南西部)などが挙げられます。平安時代は雁皮紙の厚さごとに厚様・中様・薄様に分け、やや厚めのものは「鳥の子紙」と呼んでいました。鳥の子紙は越前(福井県)で生産されたものが最高級品とされ、現在越前和紙は国の重要無形文化財に指定されています。

雁皮紙は、「雁皮刷り」という銅版画でも使用されます。雁皮紙は通常の版画用紙と比べると色の載りが良いため、アクアチントやメゾチントといった繊細な彩色が求められる作品によく使われます。ほかにも木口木版、リトグラフ、板目木版、スクリーンプリントなど、様々な版画作品に取り入れることが可能です。