「査定士に伝えるべき情報・伝えなくていい情報|相談が早くなるコツ」

2026.2.26

絵画の査定を依頼するとき、「何を伝えればいいのか分からない」「間違ったことを言ってしまいそうで不安」と感じる方は少なくありません。特に初めての場合、作品の専門知識がないのは当然です。大切なのは、詳しい解説をすることではなく、査定の判断材料になる“事実情報”を、分かる範囲で整えることです。これができるだけで、やり取りが短くなり、見立てが具体的になりやすく、結果として納得感も作りやすくなります。

一方で、善意で情報を補おうとして「推測」を混ぜてしまうと、確認が増えてしまったり、話が遠回りになったりすることがあります。この記事では、査定士が本当に知りたい情報、逆に言い過ぎない方がよい情報、写真と一緒に送ると便利なテンプレまで、実務的に整理します。出張査定でもLINE査定でも共通して役立つ内容です。


まず前提|査定で重要なのは「正確さ」と「再現性」

査定士が知りたいのは、知識の多さではなく、作品の判断に必要な情報が揃っているかどうかです。つまり、誰が聞いても同じように理解できる“再現性のある事実”が重要になります。記憶が曖昧な場合は無理に断定せず、「不明」「おそらく」と分けて伝える方が安全です。推測を断定として伝えると、後から整合が取れなくなり、結果として不安や手戻りが増えやすくなります。


伝えるべき情報①|作品の基本情報(分かる範囲で十分)

作品の基本情報は、査定の入口です。完璧に揃える必要はありませんが、分かる範囲で整理すると話が早くなります。

■ 作品の種類(油絵/水彩/版画/日本画/不明)

■ サイズ感(大きめ/小さめ、分かれば縦×横)

■ 額装の有無(ガラスがあるかどうかも分かれば)

■ サイン・落款があるか(位置も分かれば)

ここで大切なのは、「よく分からない」を恐れないことです。不明点があるのは普通で、写真と合わせて確認していくことができます。


伝えるべき情報②|入手経緯(来歴の手がかり)

来歴(プロヴナンス)は、価格に直結する場合もあれば、説明の納得感に効く場合もあります。分からないことがあっても構いません。分かる範囲の事実を伝えるだけで十分です。

■ 購入/相続/譲渡/不明

■ いつ頃から手元にあるか(年が不明なら「20年以上前」などでも可)

■ 購入先の手がかり(百貨店、画廊、作家本人、知人経由など。分からなければ不明)

■ 以前の所有者(相続の場合、誰が所持していたか)

来歴は断定できないことも多い領域なので、推測は推測として扱う姿勢が重要です。


伝えるべき情報③|資料・付属品の有無(あるだけで強い)

資料と付属品は、査定の精度を上げる“補強材料”です。これらがあると、作品の位置づけが説明しやすくなり、確認作業が短くなることがあります。

■ 購入時の領収書・請求書・納品書

■ 展覧会図録・個展DM・カタログ

■ 作品証明書(COA)

■ 共箱・箱書き・黄袋(ある場合)

■ 裏面ラベル・シール(画廊名、展覧会名、管理番号など)

資料がないから価値がない、という意味ではありません。ただ、ある場合は必ず伝えた方が良い情報です。


伝えるべき情報④|状態の気になる点(隠さない方が早い)

状態は査定額にも取扱い方法にも影響します。気になる点がある場合、隠すより最初から共有した方が、やり取りが短くなり、無理のない進め方(出張が良いか、宅配が可能か)も判断しやすくなります。

■ シミ・ヤケ・カビがある

■ 絵具の剥落・ひび割れがある

■ 破れ・折れ・波打ちがある

■ 額のガラス割れ、留め具の緩みがある

■ 臭い(湿気臭など)が気になる

ここで注意したいのは、状態を良くしようとして手入れをしないことです。自己判断の掃除や修復は、かえって状態を悪化させる可能性があります。


伝えるべき情報⑤|点数と優先順位(複数点のときほど重要)

複数点ある場合は、点数と優先順位を伝えるだけで査定が進めやすくなります。点数が多いと、全てを同じ密度で扱うのは現実的に難しいため、こちらの意図を先に共有することが大切です。

■ 全部で何点くらいあるか(10点前後/30点以上など)

■ その中で「特に気になる作品」があるか

■ 早く整理したいか、じっくり比較したいか

■ 大型作品があるか(搬出や梱包の判断に関わる)

点数が多い場合は「重要作品だけ情報を厚く、その他は概要から」という進め方が現実的です。


逆に、言い過ぎない方がよい情報①|推測の断定

査定の場面でよくあるのが、「たぶん有名作家」「昔すごく高かった」「テレビで見た」といった推測です。気持ちは自然ですが、断定してしまうと確認が複雑になり、判断がぶれやすくなります。

■ 「○○だと思う」は「○○かもしれない」に留める

■ 根拠がない情報は“参考程度”として伝える

■ 不明な点は「不明」と言ってよい

推測を排除する必要はありませんが、推測と事実を分けて伝えることが重要です。


逆に、言い過ぎない方がよい情報②|希望価格の押し付け

希望価格を伝えること自体は悪くありません。ただし、強い言い方で固定してしまうと、説明の受け取り方が難しくなり、納得感が下がることがあります。希望は「目安」として伝える方が、結果として満足度が上がりやすいです。

■ 希望は「できればこのくらい」の目安として伝える

■ まず査定根拠を聞いて相場観を揃える

■ 価格以外の条件(手間、スピード、安全)も併せて整理する


逆に、言い過ぎない方がよい情報③|自分で行った手入れの詳細を隠すこと

もし過去に掃除や補修をしてしまった場合、言いづらいと感じる方もいます。しかし、ここは隠すより伝えた方が安全です。査定士は状態を正しく把握する必要があるため、後から判明すると説明が難しくなることがあります。

■ いつ頃、どのような手入れをしたか(分かる範囲で)

■ 使ったもの(乾拭き、アルコールなど)

■ 額を開けたかどうか

責められるためではなく、判断の前提を揃えるための情報です。


写真と一緒に送ると強い「情報テンプレ」

査定の相談を早くするには、写真に加えて短い文章テンプレが効果的です。長文は不要で、これだけで十分です。

■ 作品種類:油絵/水彩/版画/不明

■ 点数:○点(大きめ○点)

■ サイズ感:大きめ/小さめ(分かれば縦×横)

■ 入手経緯:購入/相続/譲渡/不明(時期の目安も)

■ 付属品:箱/証明書/図録(有・無)

■ 状態:気になる点(シミ、カビ、割れ等)

■ 希望:早く整理したい/納得して決めたい/まず相場だけ知りたい

このテンプレは、LINE査定でも出張相談でもそのまま使えます。


写真は「最低4種類」で十分に進む

情報整理の中で、写真は最重要です。最低限、次の4種類があると相談が進みやすくなります。

■ 全体(正面)

■ サイン・落款(アップ、ピントが合ったもの)

■ 裏面(ラベル・書き込みが見えるように)

■ 状態(シミ・傷などのアップ)

額の反射が強い場合は、斜め写真を追加すると情報が増えます。額を外す必要は基本的にありません。


「事実を短く、写真を揃える」だけで査定は早くなる

査定士に伝えるべき情報は、専門知識ではなく、作品の基本情報、入手経緯、資料の有無、状態、点数と優先順位といった“事実情報”です。推測は推測として扱い、断定を避けることで確認が減り、見立てが具体的になります。写真と短いテンプレを揃えるだけで、相談は早くなり、説明の納得感も作りやすくなります。