「同じ作家の絵なのに、なぜ査定額がこんなに違うのだろう」
絵画の売却を考えたとき、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
絵画には、家電製品や新品の商品についているような決まった価格がありません。
同じ作家の作品でも、技法、制作年代、サイズ、作品の内容、保存状態、来歴、現在の市場での需要などによって評価が変わります。
また、過去に高額で落札された作品があるからといって、自分が所有する作品も同じ価格で売却できるとは限りません。
ここでは、
■絵画の買取相場はどのように考えられているのか
■査定ではどこを見られるのか
■査定を依頼する前に知っておきたいこと
を、初めて絵画を売却する方にも分かりやすく解説します。
そもそも「絵画の買取相場」とは?
絵画の買取相場には、「この作品なら全国どこでも○万円」という統一価格があるわけではありません。
査定では、同じ作家や条件の近い作品について、
■過去の取引事例
■最近の市場での需要
■作品の希少性
■技法やサイズ
■保存状態
■来歴
などを確認しながら、現在の市場でどの程度の評価が考えられるのかを検討します。
そのため、同じ作家の作品でも査定額に大きな差が生じることがあります。
「過去の落札価格=買取価格」ではない
インターネットで作家名を検索すると、オークションの落札結果が見つかることがあります。
ここで注意したいのが、
「同じ作家の作品が100万円で落札されているから、自分の絵も100万円で買い取ってもらえる」
とは限らないことです。
オークションの落札価格と買取店の買取価格は、同じものではありません。
さらに同じ作家でも、作品の技法、サイズ、制作年代、主題、状態、来歴などが異なれば、市場での評価も変わります。
過去の落札価格を見る場合は、作家名だけで比較するのではなく、自分の作品と条件がどの程度近いのかを見る必要があります。
査定額を左右するポイント①|作家と作品の市場評価
まず重要なのが、誰の作品なのかという点です。
査定では単に「有名な作家かどうか」だけではなく、その作家の作品が現在どのように取引されているのかも確認します。
たとえば、
■近年どの程度取引されているか
■どの時代の作品が評価されているか
■どのような主題や作風に需要があるか
■国内外にどの程度の市場があるか
などです。
同じ作家でも、代表的な時期の作品と、それ以外の時期の作品で評価が異なることがあります。
そのため、作家名が分かっただけで査定額が決まるわけではありません。
査定額を左右するポイント②|技法・素材
作品がどのような技法や素材で制作されているかも確認します。
たとえば、
■油彩
■水彩
■日本画
■素描
■版画
■ミクストメディア
などがあります。
ここで注意したいのは、「油彩だから水彩より必ず高い」といった一律の基準はないということです。
どの技法が高く評価されるかは、作家によって異なります。
ある作家では油彩作品の市場が中心でも、別の作家では水彩、素描、版画などが重要な作品群として評価されていることがあります。
大切なのは、技法そのものに順位をつけることではなく、その作家にとってどのような位置づけの作品なのかを見ることです。
版画では何を確認する?
版画の場合には、
■技法
■エディション
■作家のサイン
■制作時期
■保存状態
■出版元や工房などの情報
といった点が確認されることがあります。
ただし、エディション番号が若いほど必ず価値が高い、サインがあれば必ず高額になる、と単純に判断することはできません。
作家や作品によって評価方法が異なるためです。
査定額を左右するポイント③|サイズ・主題・制作年代
作品のサイズも査定材料の一つです。
ただし、
「大きければ大きいほど高い」
というわけではありません。
大型作品は、その作家にとって重要な作品であれば高く評価される可能性があります。
一方、非常に大きな作品では、展示できる場所、保管場所、運搬方法などの制約から、購入できる人が限られる場合もあります。
また、サイズだけではなく、
■どの年代に制作されたのか
■その作家を代表する時期なのか
■どのような主題が描かれているのか
■その作家らしい特徴が表れているか
なども作品を見るうえで重要な情報になります。
査定額を左右するポイント④|保存状態
作品の状態も査定で確認される重要なポイントです。
たとえば、
■シミや変色
■カビ
■絵具の剥落
■ひび割れ
■キャンバスの破れ
■紙の折れや破れ
■過去の修復
などです。
古い作品だから状態が悪いとは限りませんし、経年変化があるだけで直ちに大きく評価が下がるとも限りません。
作品の年代や材質なども考慮しながら、どのような状態にあるのかを確認します。
査定前に自分でクリーニングしない
「少し汚れているから、査定前にきれいにしておこう」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、絵画の表面を自己判断で拭いたり、洗剤や薬剤を使ったりすることはおすすめできません。
作品によって使われている絵具、紙、キャンバス、表面のコーティングなどが異なり、不適切な清掃によって元に戻せない損傷が生じる可能性があるためです。
汚れや傷みがあっても、まずはそのままの状態で相談する方が安全です。
査定額を左右するポイント⑤|来歴や付属資料
「どこで購入された作品なのか」
「これまで誰が所有していたのか」
といった作品の履歴を来歴(プロヴナンス)といいます。
作品によっては、来歴を確認できる資料が重要な手掛かりになります。
たとえば、
■購入時の領収書や請求書
■画廊や百貨店の販売記録
■展覧会図録
■作品証明書や鑑定に関する資料
■作品や額の裏にあるラベル
■共箱や箱書き
■過去の所有者について確認できる資料
などです。
こうした資料は、作品の所有履歴や出所を調べる際に役立つ場合があります。
ただし、資料がないからといって、それだけで作品に価値がないと判断されるわけではありません。
来歴と「真贋」は同じ意味ではない
ここも注意しておきたいところです。
領収書や画廊のラベルなどが残っているからといって、それだけで作品の真贋が確定するわけではありません。
反対に、古い作品で購入資料が残っていないからといって、それだけで作者を否定することもできません。
作家によっては、鑑定機関、専門家、カタログ・レゾネなどの確認が重要になる場合があります。
来歴資料は、作品について調査するための重要な情報の一つと考えるのが適切です。
写真査定では「きれいな写真」より「必要な場所が分かる写真」
LINEやメールなどで事前査定を依頼する場合、写真は重要な情報になります。
可能であれば、
■作品全体
■署名・サイン・落款
■額を含めた全体
■安全に確認できる場合は裏面
■ラベルやシール
■傷みがある部分
■箱や付属資料
などを撮影しておくと、作品について確認しやすくなります。
写真を加工して実物よりきれいに見せる必要はありません。
明るい場所で、色や状態ができるだけ実物に近く分かる写真の方が、事前確認には役立ちます。
作者が分からなくても、無理に調べる必要はない
作品に読みにくいサインがあると、インターネットで似た署名を探して作者を推測したくなることがあります。
しかし、
「おそらく○○の作品だと思います」
と無理に結論を出す必要はありません。
作者が分からなければ「不明」、購入先を覚えていなければ「分からない」で問題ありません。
作品そのものや裏面、ラベル、箱、付属資料などから確認できることもあります。
分かっている情報と、家族から聞いた話、推測した情報を分けて伝える方が、作品を調べやすくなります。
「購入価格=現在の買取価格」ではない
絵画の売却で特に誤解されやすいのが購入価格です。
たとえば、百貨店や画廊で100万円で購入した作品だからといって、現在100万円前後で売却できるとは限りません。
購入したときの価格と、現在の二次流通市場で形成される価格は別のものだからです。
反対に、購入後に作家の市場評価が変化することもあります。
そのため査定では、「いくらで買ったか」だけではなく、現在の市場で類似作品がどのように評価されているかを見ることが重要になります。
「有名作家だから高額」とも限らない
よく知られた作家であっても、すべての作品が同じように高額で取引されるわけではありません。
同じ作家でも、
■制作年代
■技法
■主題
■サイズ
■作品の質や位置づけ
■状態
■来歴
■市場での需要
などによって評価は変わります。
インターネットで作家の最高落札価格を見つけても、それだけを基準に自分の作品の価値を判断しない方がよいでしょう。
査定額が違ったときは「理由」を確認する
複数の買取店に査定を依頼すると、提示される金額が異なることがあります。
これは珍しいことではありません。
買取店によって得意とする作家やジャンル、販売先、在庫状況などが異なるためです。
査定額を比較する場合は、金額だけでなく、
「どのような作品として評価したのか」
「何を参考に査定したのか」
「状態や付属資料をどう評価したのか」
といった説明も確認してみるとよいでしょう。
金額の理由が分かれば、自分自身でも売却するかどうかを判断しやすくなります。
絵画の相場は「一つの数字」では考えにくい
絵画の査定では、
■作家と市場での評価
■技法・素材
■サイズ・主題・制作年代
■保存状態
■来歴・付属資料
といった要素に加えて、希少性や類似作品の取引状況なども確認します。
つまり、作家名だけを検索して「この作家は○万円」と判断できるものではありません。
また、過去のオークション落札価格、購入時の価格、現在の買取査定額は、それぞれ意味が異なります。
絵画を売却するときは、「いくらになるか」だけでなく、「なぜその金額になるのか」を確認することが大切です。
作品について分かる資料や写真を揃え、現在の市場でどのように評価される作品なのかを確認する。
そのうえで売却するかどうかを判断することが、納得できる取引につながります。
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