象嵌

象嵌(ぞうがん)とは、1つの素材に異なる材質の素材を嵌め込む装飾技法のことです。「象」は「かたどる」、「嵌」は「はめる」という意味があり、世界各地で美術品や高級な調度品を彩ってきました。日本では食器、甲冑、重箱など、さまざまな製品で用いられています。象嵌で使用する主な素材は、金属、貝殻、骨片です。

象嵌の歴史は古く、古代メソポタミアや古代エジプトでは、王族のための工芸品や武器を装飾するために用いられていました。日本にはシルクロード経由で飛鳥時代に伝来し、正倉院宝物にも初期の作例が見られます。江戸時代になると刀の鞘や鍔の装飾として、独自に発展しました。明治時代以降は海外への輸出用にも作られ、現代も伝統工芸や高級家具、楽器への装飾に取り入れられています。

象嵌は、土台になる素材や嵌め込む素材によって、いくつかの種類があります。主な種類は、金工象嵌、木工象嵌、螺鈿です。金工象嵌では鉄や銅などの金属でできた土台に、異なる材質の金属をはめ込みます。木工象嵌は、木でできた土台に色や木目が異なる木材を組み合わせる技法です。螺鈿では木や漆器の土台の表面に、夜光貝やアワビなどの貝殻をはめ込みます。

異なる素材を組み合わせて作るため、絵画のような彩色のコントラストが生まれるのが、象嵌の特徴です。制作の過程で表面を平らに研ぐので、本当に1枚の絵のような滑らかな質感に仕上がります。経年劣化によって素材ごとに風合いが変化し、使えば使うほど味わいが増すのも、象嵌の魅力です。