ミューラーとは、フランスのガラス工芸ブランドのことです。19世紀末から20世紀前半にかけて、「ミューラー兄弟」と呼ばれる10人の兄弟が中心になり、アール・ヌーヴォーとアール・デコの両時代を牽引しました。兄弟の多くがガラス工芸の巨匠エミール・ガレの工房で働いた経験があり、高い技術力とデザイン性を誇りました。
ミューラー一家はもともとフランスのアルザス地方でガラス工芸を造っていましたが、プロイセン・フランス戦争の影響で故郷がドイツ領になったため、ロレーヌ地方のナンシーに移住します。ナンシーに移住した後、兄弟はエミール・ガレの工房で働き、ガラスの技術と芸術的なセンスを教わりました。
1895年に三男のアンリが独立し、フランスのリュネヴィルに工房を設立します。その後他の兄弟もアンリのもとに集まり、ミューラーの基盤が構築されました。1900年にはパリ万国博覧会で多くの賞を受賞し、ガラス工芸ブランドとしての地位を確立します。
しかし1914年に第一次世界大戦が勃発すると、フランス国内の工場は戦争のための軍事工場に転用するか、閉鎖することになります。終戦後、ミューラーはガラス制作を再開し、クロワマールにある工場を買収しました。1920年代には時代の変化に合わせて作風をモダンにするなどして成功しましたが、1929年にアメリカで発生した世界恐慌の影響で業績は悪化し、1936年に工房が閉鎖されました。
ミューラーの作品の特徴は、時代の変化に合わせたデザインを取り入れているところと、「被せガラス」によるガラス彫刻です。アール・ヌーヴォーの時代は植物や自然、アール・デコの時代には「機能性の美」をデザインに取り入れました。被せガラスとは、ガラスに別の色のガラスを被せる技法で、レリーフ文様を刻んだ美しい作品を制作しました。

