木版画

木版画とは、木製の原板で制作する凸版画のことです。描きたい絵柄を彫り残し、凸部にインクを乗せて紙に写し取ります。原板に使用する木材は、桜材・ナナカマド木・洋梨材などです。英語では「ウッドカット」「シログラフ」と呼ばれることも。歴史的にも木版画の出現は早く、版画技法のなかで最も古いものの1つと言われています。

年代が判明しているもので最も古い木版画作品は、869年に制作された敦煌(中国・甘粛省)の仏画です。日本で木版画が盛んに作られるようになったのは、16世紀末期から17世紀初期にかけての慶長期のころ。京都で初めて木版画による挿絵を挿入した嵯峨本が出版され、出版物への挿絵に木版技術が使われるようになりました。

出版文化の拠点が江戸に移ると、木版画は冊子への挿絵だけでなく、1枚の絵画作品としても扱われるようになります。17世紀後半に入ると浮世絵師が現れ、工程ごとの分業によって高度な作品が多数版行されました。

ヨーロッパで木版画の制作が始まったのは、14世紀後半。製紙法の伝来と活版印刷術の普及により、15世紀に広まりました。当時の作例として代表的なのが、芸術家で数学者のアルブレヒト・デューラーが残した『黙示録の四騎士』と『犀』。図柄や陰影を繊細に表現するために、高度な技術が用いられています。

グーテンベルクが印刷機を発明すると、刷毛などで着色していたのがプレスに、原板は木版から銅板へと変化します。ヨーロッパでは銅版画への道が開き、新しい版画技法の開発へと乗り出すこととなりました。